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おれは筆を選んだ

ずいぶんと長い間カメラを買い換えると言い続けた。買う買う詐欺もほどほどにしょうとついに思い、先月末にようやく買い換えた。たった一台のカメラを買うことを踏ん切るのに、実に2年以上の年月がかかった。Adobeのパッケージはポチっと買えても、カメラというのはやはり僕にとっては特別なもので、そうそう簡単に買い換えることなどできない、というわけでは決してない。踏ん切れなかった理由は、今までのカメラでも十分事足りていて、それで新しいカメラを買うなんてもったいないと思っていたからだ。

一昔前、「弘法筆を選ばず」ということわざを用いて子どもは教育された。しかし現代では、「こうぼう」と入力するとすぐに「弘法筆を選ばす」と推測変換が表示される。また、「恋」と入力してCtrlとTabを叩くと、恋に関連した連想候補が290個表示される。いい筆によって作業時間は半分になり、文章の表現力は倍になる。物事の出来は意外と環境要因に大きく支配されている。(中略) つまり、私が言いたいことは、写真でも同じだということだ。弘法こそ筆を選ばなければならない。環境がベースとなり、モチベーションがそれに拍車をかけることによって、効率的な上達が期待できる。なぜなら、私たちのファインダーの向こうには、長いレンズでなければ撮れない鳥が飛び回り、明るいレンズでなければ表現できないボケ味があるからだ。日本人の傾向として、上達してからいい機材を買おうとしがちだ。しかし、本当の情熱があるならどんな初期投資も怖くはない。弘法はそれを「自分への投資」と呼ぶ。

お恥ずかしい文章を晒してしまった。これは高校卒業のときに、部活の卒業文集に書いたものの一部だ。要約すると、写真が好きならケチらずに機材買おう!という後輩へのメッセージのつもりだ。偉そうにそんなことを言っておいて、自分は高校2年のときに買った初代EOS Kiss Xを5年以上も使い続けていた。最新のカメラがより正確な露出で写真を生み出すということくらい、頭では十分に分かっていた。だが、やはり2年間悩まずには買えなかった。

新しいカメラは、EOS 60Dだ。7Dと迷ったかって?そんなことはなかった。買うなら60Dだと決めていたからだ。それでも、ずっと買えなかった。買い物自体は極めてシンプルだった。値段はカカクコムで十分調べていたし、タイの洪水で値上がりして以来品薄らしく、下がる気配もなかった。行きつけのカメキタで、ほんの5分で買った。店員さんを呼んで「これ、これ以上下がりませんよね?ですよね。じゃあこれ1つください」 2つくださいというヤツがどこにいるというのか。

買い物の背中を押したのは、ある友達のお姉さんがKiss Xを買い取りたいと声を掛けてくれたことだった。眠っていた標準ズームと合わせて譲った。カメキタの下取りやヤフオクでもいいのだが、はやり知っている人に使っていただいた方が、お互いにいいだろう。その話が来た瞬間に、やっと60Dを買うべき時が来た、タイの洪水なんて関係ない、そう思った。

プラスチックで一括払いをして、家に帰った。大きい買い物をするというのは、実に爽快だ。買い物の話はこのくらいにしよう。

新しいカメラの率直な感想を述べたい。

本当によい。そして、素晴らしい。

伝えたいことは、それだけだ。それ以上何を伝える必要があるだろうか。

「カメラじゃないでしょ、腕がいいんでしょ?」そんなことを言われて、嬉しくないわけがない。だが、本当のところ、カメラもいいし、レンズもいい。おれは、プライドとかないし、意識とか低いから、これからも筆を選んで生きていくぜ(笑)。

買い物しようよ!

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