積ん読を少しずつ読み進めているこのごろ。ずいぶん久しぶりに石田衣良を読んだ。本棚で眠っていた「うつくしい子ども」という小説で、それは1999年に単行本、2001年に文庫本が発売された。
緑豊かなニュータウンを騒然とさせた9歳の少女の殺人事件。犯人として補導されたのは、ぼくの13歳の弟だった!崩壊する家族、変質する地域社会、沈黙を守る学校…。殺人者のこころの深部と真実を求めて、14歳の兄は調査を始める。少年の孤独な闘いと成長を痛ましくもみずみずしく描く、感動のミステリー。
裏表紙の説明によって、殺人事件の犯人が主人公の弟であることをあらかじめ知った上で、読者はこの作品を読み始めることになる。最初はゆっくりとしたペースで徐々に弟にフォーカスしていったかと思うと、そこから先は石田衣良の軽快なテンポで物語はどんどん進んでいく。少し昔に実際に起きた事件を題材にしているということもあり、なかなか重いテーマを扱った作品ではあるのだが、ジメジメしたものはほとんど感じられない。登場するすべての人々が著者によって救われていくという期待を、物語が僕たちに抱かせるからだと思う。もっともそれは、物語の雰囲気というよりも石田衣良が書いているという安心感のようなものも、もちろんある。
この作品のテンポのよさは、海外ドラマTwenty Fourに似たものを感じさせる。物語は、主人公〈ぼく〉と新聞記者〈山崎〉とで頻繁に視点を切り替えながら進んでいく。そして、それらがほどよくリンクして、次第にパズルは組み立てられていく。〈ぼく〉は一人称であるのに〈山崎〉は三人称であるという点も、2つの視点から描きつつも主人公にフォーカスを持ってきている感じがして読みやすかった。
友達の〈長沢くん〉と〈はるき〉がとてもいいヤツで、幾度となく主人公を、そして読者を救ってくれた。大変な状況になっても素敵な親友がいて主人公は本当によかったなあ、と僕は何度も思った。そして、この3人のことが少しだけうらやましくなった。
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