ホントのわたし、デビュー。

中学生になるころから僕の視力は少しずつ下がりはじめ、仕方なくメガネをかけることになった。今の時代においては目が悪いことはごく当たり前なのかもしれないけど、当時の田舎では視力が低くて矯正しているというのは「おれ視力低いんだぜ。現代っ子なんだぜ~」みたいな感じの、かなり歪んだ優越感みたいなものがないわけでもなかった。ストゥーピッドだった。

それからというもの、徐々に視力は低下を続け、20歳くらいでやっと落ち着いた度数は左-2.75、右-2.25といったところだ。昔から使っているからということもあるだろうけど、僕はなんだかんだメガネが好きで、いろいろなフレームをちょくちょく買ってきた。今では4つのフレームを持っている。その日の気分やファッションに合わせて選べるというのは、メガネのいいところだ。

ところが、ある日、女の子からふいに言われたのだった。「IPPEIさん、コンタクトのほうが絶対いいよ♡」

調子に乗った僕は、すぐに眼科に行き、人生で初めてとなるコンタクトレンズを購入することになった。行く前は結構ビビっていたのだが、なんてことはなかった。目に入れるだけのことで、それは拍子抜けするくらい簡単だった。そして、僕が今まで見たことのなかった、あまりにもクリアな景色が、そこには広がっていた。メガネと違って、視野の全てがちゃんと見えるのである。これは驚くべきことだ。それでいて、眼球に異物が入っている違和感はほとんどない。裸眼で視力が回復したような錯覚に陥ってしまうのだった。こんなに快適なもの、何故もっと早くから使わなかったのだろうか。僕は激しく後悔した。

ちょうど暑い季節だったこともあって、生活はかなり快適なものになった。ただ、一週間経っても慣れないもので、存在しないメガネを持ち上げようとしたり、汗を拭うために取り外そうとしてしまうのだ。なかなか恥ずかしいけど、この快適さにはかえられない。

ランニングコスト的には、高級なメガネを年間で3フレーム以上は買える気がする。日によってメガネと使い分けたいということもあり、とりあえずワンデーのものを選んだ。眼科には定価と思われる値段で買わされてしまったので、次からはネットで買おうと思っている。

快適になったのは生活だけではない。まわりの人たちの反応がびっくりするくらい変わったのだ。一昔前の有名なTVCFを引用するなら「ホントのわたし、デビュー」というやつである。オーバーに聞こえるかもしれないが、自分が別の誰かになったような違和感さえ感じる。特に女の子の反応は以前よりだいぶいいものになった。おそらく、従来のメガネの僕は見た目の年齢がだいぶオジサンだったらしい。コンタクトにしてやっと20代として見られるようになった。

数年ほど前に「人は見た目が9割」という新書があったことを思い出す。9割というのも大げさかもしれないが、人間関係においては第一印象が最も重要だと言われているし、外見から改善を試みることは言ってしまえば非常に合理的である。そういったきっかけを通して僅かであっても自信を持つことができれば、性格もより明るくなることだろう。そう考えると、外見と性格にはそれなりの相関関係がある。僕の偏見によれば、多くの場合、顔がかわいい子は性格もよい。

というわけで、僕が言いたかったことは、コンタクトデビューによって新しいワタシを始めるには秋は最もよい季節だということだ。人は、見た目から変わることができる。ちなみに、その新書、読んだことはない。

買い物しようよ!

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