朝刊折込

「折込を出したいのだけど、作ってくれないか」
お世話になった塾の塾長にそう言われたのは2週間ほど前のこと。ラップトップ片手に打ち合わせに乗り込んだ。広告関係の仕事に興味のある私にとっては、素晴らしいチャンスだ。

今までは近所の印刷屋にデザインからオフセット印刷まですべて任せていたが、コストの都合上、私に頼んだ方が安いと判断してくれくた。地元の印刷屋はデザイン料をぼったくっている。そのことは高校の時、生徒会の仕事から学んだ。

手書きの原稿を受け取りとりあえず持ち帰ったが、情報量が多すぎて説得力に欠けると判断した私は、原稿とは180度異なる案を作って次の日持って行った。俺の作ったものは、情報量を最小限に抑えた、非常にシンプルなものだ。フォントも小さめで現代風。

「ぜんぜん違うじゃん!」
そう来ると思っていたぜ、と言わんばかりに私は言い返した。
「ソフトバンクのコマーシャルは、真剣に見ていなければ、ソフトバンクだということ以外なにもわかりません。でもそれでいいんです。このチラシも、見た人が○○予備校ってのが○○駅のとこにあるんだってことが分かれば十分なんです。本当に興味のある人は電話してくるし、そうでない人はどれだけ詳しく書いてあるチラシだって一行も読みません。」

私は続けた。
「みんな、もったいないと思ってしまうんです。どうせ金をかけて折込を入れるんなら、よりたくさんの情報を載せなければもったいないと思ってしまう。でもそうじゃないんです。そこで我慢できなければいけません。かっこよくてシンプルなのが目立つのです。これはスーパーの特売チラシとは違うんです」

結局、塾長は私の考えを分かってくれた。確かによく見ると説得力があると言った。それはきっとキャッチコピーがイカしていたからに違いない。

どれだけ効果が出るか楽しみだし、不安でもある。俺の力が試されるときだ。明日水曜日の朝刊に、飯田市エリアに折り込まれる。63kgコート、A4両面モノクロ、11,000部。初仕事にしてはかなり緊張したことは言うまでもない。

アドビのIllustratorは持ってないので、30日間体験版を使った。あと10日ほど残っている。それにしても本当にいいソフトだ。頭の中に描いたものが、しっかりと画面に結ばれる。絶対に学生のうちにフルパッケージを買わなければと思っている。

買い物しようよ!

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