どっかのCS放送で、小田和正のミュージックビデオの特集をやってたから、ちょっと録っておいて、今見ている。曲はもちろんだけど、映像もなんか素敵で、涙を誘う。映像って、写真のひとつ上の次元にあるんだと思う。時間軸が加わるということは単にその倍になるんじゃなくて、その二乗になるんだと、そんなことを考えて、やっぱり写真が撮りたいと思った。

気がつけばそれはもう1年以上前、「もしドラ」という本が出版されて大反響となり、2010年の書籍ランキングで1位になったことは、みなさんも記憶に新しいと思います。発売当初からずっと読みたいとは思っていたのですが、買いたいわけでもないし、学部の友人はそんなに面白くないと言うし、そんな感じで1年以上経ってしまいました。

そして先日、ふとしたことで、ついにその本を貸してもらうことができたのです。早速読んでみました。

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もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら(岩崎夏海)

いろんなレビューや友人の話で聞くように、小説としては確かに評価は低いかもしれません。現時点でAmazonに掲載されている522のレビューのうち、184の星5つに対して、55の星1つがあります。評価が割れすぎだと思いきや、星2つ~4つもまんべんなくいます。母数が大きいせいかもしれませんが。あと、噂で聞いて期待しすぎて読むからガッカリするって人が意外と多いのかもしれません。私のように1年間疑った後に読むと、それなりにしっくりきます。

まあ、噂やメディアやいろいろで誰でも知っているとは思いますが、この小説は、野球部のマネージャーになった主人公が、ドラッカーの「マネジメント」という本を参考にしながら、野球部を運営していくというものです。

私は、この小説、とても評価できるものだと思っています。というのも、何より発想が面白い。この小説には、野球部っていう固定観念が全くない。私たちはしばしば、野球部と言えば「伝統を重んじる」とか「厳しい」とか「縦社会」といった、偏ったイメージを抱きがちです。でも、この小説はそうじゃない。「野球部とは何か」から導入される。野球部を定義するところから始まるのです。そして、主人公みなみは、「マネジメント」を読んで、考えて、数々の試練を乗り越えてみんなと共に成長していきます。青春系です。

私は、この小説を自分の高校時代に重ねてしまいました。伊那北で写真部を立ち上げて、ブランド化して、なんか上手い調子にイケイケな写真部になったというその過程と、どこか似ているように感じたのです。だから、読み進めながら、みなみに対して「頑張れ!考えるんだ!」と心の中で応援してしまう自分がいました。

だけど同時に、なんだか悔しい気持ちになりました。それは、自分が高校1年のときに、写真部の部長(マネジャーとは呼ばれていなかったが)になったときに、この本に出会っていたら…と考えてしまったからです。それはとても残念な気持ちでした。私はまだ若かったので、とりあえず意識してたことはブランド化くらいでした。いろいろ工夫したし、頑張ったし、仲間にも恵まれていたけど、イケイケ写真部になったけど、完璧を100とすると自分の中では30くらいだったように思います。もし、当時これを読んでいたら、そうでなくても「マネジメント」を読んでいたら、もうちょっと何か違う方向が見えていたのかもしれないし、30だったのが35になっていたかもしれない。そんなことを考えながら、ちょっと複雑な気持ちになりながら読みました。

そういった意味で、これは小説でもなければ、経営学やビジネスの本でもなく、自己啓発本だと私は思うのです。Amazonのレビューでボロクソに言ってる人を否定するつもりもないけど、真摯さを持って読めば、この小説は泣けます。そして、今自分のまわりを取り巻いているものが、なんとかなるような気がしてきます。とても元気が出ます。この本を最も読むべき人は、やっぱり野球部のマネージャーであり、もしかしたら写真部の部長なのかもしれないからです。

賛否両論はあるかと思いますが、図書館にあるかもしれないので、一度手にとってみて欲しい一冊です。