それぞれの夕刻

週末というよりも、どちらかというと平日の夕方、喫茶店によく行く。席は窓際に限る。街を行く人の流れ、次第に色を失っていく空、少しぬるくなったコーヒーが、様々な感情を抱かせる。どんなに忙しいときでも、一杯のコーヒーに耽る時間は欠かせない。

BGMは聞こえるかわからないくらいがいい。選曲は慎重でなければならないが、その意識が客に伝わらないくらいがいい。喫茶店にとっての本当のBGMは、そこにいる人たちの会話であり、文庫本のページをめくる音であり、紙の上を走るシャープペンシルの乾いた音であるからだ。窓の街を見るのと同時に、それらに聞き入ることも、喫茶店の醍醐味といえる。

ハロウィンが終わった翌日、街は一瞬にしてクリスマス色に染まる。季節が変わることだけを伝える。決して待つことを知らない街の中で、明日に乗り遅れまいと、5分後には次の電車が来るはずのホームで、人々は歩く足を急がせる。「こんどの電車は前の駅を出ました」というアナウンスなしには電車さえ待てない。加速器のような街の流れに急かされて、自分だけの時間軸を失ってしまう。

なにかに悩んだとき、待ち合わせまで時間があるとき、あるいは新しいアプリを買いたくなったとき、喫茶店に立ち寄ってみるといい。そこには、日常とはどこか軸を異にした、あなただけの時間が流れている。

買い物しようよ!

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