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こってりとした時代

街を吹く風が凍るような季節には、熱いラーメンが欠かせない。湯気はメガネを曇らせ、そして誘惑する。

東京に平成のラーメンブームが訪れて5年が経つ。今回のブームは、こってり系が座を占めた。豚骨スープ、魚介系だし、背脂、そして、極太ちぢれ麺は3段階から茹で具合を選ばずには注文さえできない。

数年前、他紙の投書欄に「私は醤油ラーメンしか食べない」というものがあった。それに対し「人生損している」と編集部が厳しくツッコミを入れていた。この方の主張は、確かに現代のラーメンブームには逆らうものかもしれない。だが、今こそシンプルなラーメンを再評価すべき時ではないだろうか。

「ラーメンは時代を形容する鏡」としばしば言われるが、昨今のこってり系ラーメンはまさに、複雑化しすぎた時代を象徴している。高層化するタワー、流れ続けるタイムライン、原価率の予測さえできない150円の外資系フレンチフライ、スマートフォンに取って代わられた携帯電話―それらすべての代償が、2011年の大震災であり、人類への戒めだという人さえいた。

いつの時代も、あっさり醤油味、ストレート麺の「中華そば」を超えることのできるラーメンはない。シンプルさは脆弱さの対極にあり、そしてそれは決して揺るがない。透き通ったスープの向こうに、明日が見える気がする。

買い物しようよ!

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