さえずり(改)

鳥は、2種類の鳴き声を使い分けるのだと、最近ラジオで聞いた。雄が雌を呼ぶときの鳴き声「さえずり」と、それ以外の「地鳴き」である。さえずりは地鳴きよりも高い声で、力強い。本来、動物というものは繁殖が最重要トピックなのだ。

「鳥といえばさえずり、人間といえばTwitter」とは的を射た言葉だ。人間が動物的な部分を失い、ずいぶんとシャイな生き物になると、僕たちはTwitterなしにはさえずれないようになってしまった。

TwitterのクライアントAIRアプリに「Saezuri」というものがある。古くからある優良なアプリなので、愛用している人も多いだろう。帰宅してPCを開く。多いときだと1,000件以上の未読が通知される。そのくらい流動的な世界なのだから、誰かに伝えるべきさえずりはそう簡単には届かない。

2012年が始まる瞬間、Twitterのサーバーが盛大に落ちた。日本中の人が「あけおめ!」の一行をツイートするのに必至だったからだ。年始の挨拶でさえオン・ザ・タイムラインで事足りるようになってしまった。悪いとは言わないが、僕は好きじゃない。

今年の年賀状は、宛名面もペンで書いた。データを印刷してしまえば簡単だが、人の名前を書くという行為は特別な楽しさがある。「いい名前だな」と思う。名前とキャラクターが相関していない人などいない。そこにはそれぞれのストーリーがある。

「2012年もまだ始まったばかり」などと油断しているうちに春は突然やってきて、街には春一番が吹き抜け、さえずりが鳴り響く。僕たちは来る春の加速度に心を踊らせずにはいられない。3月はすぐそこ。年度が替わる前にやり残したことをやるなら、今しかない。人たちのさえずりも聞かれるだろうか。

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