すべての物語は喜劇と悲劇にわけられる。そんな言葉がふと浮かんでは消える。出尽くされたなハッピーエンドや、ほかほかする小説もいいけど、期末試験明けのカフェで一気に読む美しい悲劇は、それに代わることのできない力強さを持っている。そんなことを感じた小説だった。
去年の10月頃、ある友人に勧められたのは、桜庭一樹の「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」という本だった。名前からして僕の好みじゃなさそうだな、とか思いつつも、文庫の表紙の洒落乙さに、Amazonですぐに注文したのだった。そして、本棚から取り出されたのは結局2月になってしまった。(積ん読はいつだって増え続ける一方だ。)
割と僕は集中力が続かない方なので、1冊の本を少なくとも3日くらいかけないと読めない。しかし、どうかするとたまに1日で読んでしまうような本がある。これはそんな小説だった。読まずにはいられない。そういう力を持っている。橋本のサンマルクで一気に読んでしまった。最近ではあまり味わっていないスピード感だった。それは、全体に無駄がなく、極めてスリムな小説だからということもあるだろう。ページ数は200ページくらいと、ごく軽い。だが、決して軽くはない。登場人物は多すぎず、少なすぎず、それぞれが不可欠なキャラとして存在している。この本はライトノベルとしてカテゴライズされているのかもしれないが、そうとも言えないと僕は思った。
泣けるとか、特にそういう感じでもないのだが、きれいなのだ。これは、きれいな悲劇だ。読者は、悲劇であることを知らされていながら、ページをめくらなければならない。読み進めるごとに、悲劇はよりリアリティを帯びていき、読者は決して救われない。
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