夏の終わりのような曲たち

僕は夏の終わりの季節が一番好きだ。昔から変わらない。

それはどこか切なく、そして、新しい気持ちに入れ替えさせるような何か強いものを含んでいる季節だ。

春を始まりの季節だと考える人もいるが、僕にとっては夏の終わりこそがまさにそれだ。それは、暑さや恋や雑草と闘って疲れた心を解き放すことを許してくれて、空を見て秋の空気を大きく吸い込むと、「ああ、また次の夏が来るまでがんばってみよう」と思わせてくれる、そんな季節だ。

少し前に、そんな気持ちを歌に詠んだ。

せつなくて 夏の終わりのような空 夏の終わりのような曲たち

自分で言うのもなんだけど、結構気に入っている。秋という季節は、他のどんな季節よりも、一瞬にしてやってくる。夏のようにじわりじわりと押し寄せてくるということは、決してない。「あ、秋だ!」と思ったときこそが秋の始まりなのだ。その潔さこそが、秋の魅力だと言っても過言ではない。

一瞬にしてやってくる秋を、どんなことから気づかさせられるのかというのは、いつの年も、その秋の質を決めるのに大きく影響すると思う。例えば、空気の冷たさであったり、空の透明度であったりするかもしれない。あるいは、いつもより少し苦めのビールを体が欲したときかもしれない。

僕にとって、今年の秋を運んできたのは、桑田佳祐の新しいアルバムだった。特にこれといって絶対に買おうと思っていたわけではないのだが、TSUTAYAで見かけて(レンタルでもよかったのだが)、そのCDが僕に買いなさいと言うのだから仕方なかった。

冒頭の3曲を聞いただけで、僕は打ちのめされずにはいられなかった。それは間違いなく、僕に聞かせるためにプレスされたCDだった。夏の始まりにリリースされたこのアルバムを、夏の終わりに買ったこともまた、確信犯的だった。そのくらいにあまりにも重要な3曲だった。

iPhoneに入れて、ジョギングに持ち出した。悲しい気持ち(Just a man in love)、今でも君を愛してる、いつか何処かで(I feel the echo)、という流れの冒頭3曲を大きめの音量で聞きながら、ゆっくりと走った。僕にとっての今年の秋が訪れたのは、その瞬間だった。

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