それは、秋というより、冬のはじまりの京都だった。

高校のとき同じクラスで仲のよかった長瀬から京都に来ないかとメールが来たのとほぼ同時に、かずひろマンからも京都に行かないかというメールが来た。この二人、何かあったに違いない。僕はそれを直感しながら「行こう」と返信した。およそ2週間ほど前のことだった。

京都に行ったのは2回目で、中学の修学旅行ぶりである。ほとんど覚えていない。駅の中には巨大なクリスマスツリーが輝き、京都といえども普通に欧米スタイルなのだった。

長瀬は遅くまでバイトだというので、かずひろマンとコーヒーを飲みながら恋バナなんかをして、京都の夜を見ていた。彼とは現地集合だったのだが、彼が「スタバの前に来たんだけど、京都タワーがここにはない」と言うから僕は他のスタバかと思って探したら、彼は京都タワーの真下にいたから見えなかったというオチだった。

やがて長瀬と合流して、終了間際の銭湯に駆け込み、コタツで酒を飲みながら語り合っているうちに、みんな眠りについていった。

さて、2日目の朝を迎えた。天気が微妙だった。曇りときどき雨みたいな感じ。僕は京都とか日本史とか全くわからないので、行き先はかずひろマンにおまかせだった。ちなみにこの日も長瀬は用事があるみたいで、かずひろマンと二人旅だった。

まずは晴明神社に行った。これがまた、洒落乙な神社だった。そんなに有名な観光名所ではないのか、広すぎず、客もまばらで、落ち着いていた。おみくじをやったら、僕は小吉だった。解説もしっかり読んで、心にとめておこうと思った。

そして、これは知らない人もいないだろう、銀閣寺に行った。

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もっと城みたいなサイズの建造物を想像していたのだが、普通の2階建てだった。この建物の前で「それで、銀閣はどこにあるんだ?」と言ってしまった。観光客たちの白い目線が突き刺さった。

庭がまたなんともいい感じだった。紅葉はもちろんだけど、雨のおかげで石や苔はしっとりとしていて、写真的にはむしろよかった。小さな滝が落ちていた。

苔に落ちる落葉のコントラストがあまりにも洒落乙だった。こんな庭が家にも欲しくなる。

続いて清水寺へ向かうことにした。清水寺へ行くだけで疲れ果ててしまった。というのも、バスがありえないくらい混んでいたし、道も渋滞していたのだ。銀閣寺から清水寺まで1時間以上かかった。

しかもバス停から仁王門までの路地が人であふれかえっていた。歩くのも困難なほど。ようやく着くというときになって、アナウンスが流れた。5時半に閉まります。時計はもう5時だった。スカイツリーのほうがまだマシだった。

というわけで、長瀬へのお土産を買って帰ることにした。京都に住んでいる人に京土産を買っていくセンスが、かずひろマンだと思った。

その夜は、また銭湯に行って、それから湯豆腐をして過ごした。帰りに成城石井で買った1パック300円のやつ。アツい夜が過ぎていった。

3日目は長瀬も空いているということで、3人で嵐山に行くことにした。素晴らしい天気だった。

途中で広隆寺に寄った。僕は全然詳しくないが、かずひろマンは仏像の知識があるみたいで、仏像のポーズを何度もまねしていた。

嵐山に着くと、ありえないくらいの人だった。

そして、見事な紅葉を見ることができた。透明感のある赤や黄色が、青空とのコントラストを奏でていた。感動した。看板にわざわざ「見頃」と言われても、それは納得の見頃だった。

嵐山といえば竹林らしいが、こちらも素晴らしかった。午後だったので逆光で、それもまたよかった。竹林はどのシーズンでも写真にはなりそうなので、また空いているときに来てゆっくり撮りたいと思った。人が多すぎて集中して撮れなかった。意外と光量がなく、ブレまくりだった。

毎年行こう行こうと思って、行けていなかった京都。なかなかいいところだった。

現地集合、現地解散というスタイルで、2泊3日。あまりにも楽しい時間だったから、帰るのが少しだけ寂しかった。京都のよさも分かったけど、長瀬のかわいさに気づいた旅だったように思う。いつも野郎のように接してしまう彼女だけど、寝顔を見てたら、ああ女の子なんだなって思った(こんなこと書いたら怒られそうだけど)。また機会があったら是非行きたい。なんだかんだで、かずひろマンも僕も長瀬のことが大好きだからね。ビリーズ・ブート・キャンプをやるには少し狭い長瀬のアパートの座標は、もう覚えてしまった。