朝井リョウ「少女は卒業しない」

朝井リョウの小説を読むのは、「桐島、部活やめるってよ」に続いて2冊目だ。今回紹介するのは、廃校になる高校の最後の卒業式を描いた短編集「少女は卒業しない」である。以前からずっと気になっていて、文庫化されたら読もうと思っていたのだが、全くその気配がないものだから、しかたなくAmazonマーケットプレイスで購入して読んだところだ。

なんというか、あまりにも安易な表現をしてしまうと、あまりにも素敵な小説だった。僕が本を読んで涙を流すなんてことはめったにない、というわけでもないけれど、この小説もまた僕を何度も泣かせるのだった。

廃校になる高校の卒業式という少しばかり切ないテーマにもかかわらず、この小説は初冬の朝のようなすがすがしさが感じられた。初冬に読んだからだろうか(笑)。重すぎるシーンは全くなく、いたって爽快でありながら、ひとつひとつの丁寧な言葉たちは僕の心をつかんで離さないのだった。

好きでした。過去形にして無理やりせりふを終わらせればやっと、エンドロールが始まってくれる。

印象に残っている一行を引用した。1つめの短編「エンドロールが始まる」の最後だ。僕は、朝井リョウの文体がとても好きだ。落ち着いていて、そして説得力があると思う。「エンドロールが始まってくれる」という無生物主語の一文は、あまりにもオツだ。それは「エンドロール」という主語のおかげでもあるのだけど、「私が」過去形にして無理やりせりふを終わらせることによって「エンドロールが」始まる、という流れがあるからである。

今年もあと1ヶ月。年が明ければ卒業式のシーズンを迎える。そんな季節に読むなら、この小説はちょうど心地よいかもしれない。

買い物しようよ!

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