僕たちは賢い消費者にならなければならない

2016年は、いくつかのよろしくないニュースで始まったような気がする。廃棄冷凍食材の横流し事件は、軽井沢でのツアーバス事故によって、一瞬にして僕たちの関心から忘れ去れることになった。もちろん、バス事故だって、時間が経てば過去の話となっていくことは避けられない。残念なことに、僕たちの記憶力はその程度だ。今回の格安ツアーを利用した乗客のうち、いったいどれだけの人が2012年に起きた関越道での事故のことを覚えていただろうか。

今回のことで様々なメディアを見ていると、バス会社やツアー会社に過失があることはもちろん、国の規制や管理は十分だったのか、バス運転手の労働環境と運転手不足などについて、さまざまな角度から報道していた。もちろん事故を起こした企業は罰せられるだろうし、国の規制も強化されることになったり、ツアーバスの価格帯も変わることになるかもしれない。

だが、それだけで根本的な解決になるのだろうか。僕はあえて言うけど、消費者にも責任があると思っている。それは、今回犠牲になった人ということではなくて、格安ツアーを好んで利用している人すべてだ。安ければ安いほどいいという価値観を否定するわけではないが、そのような人々による需要があるから、格安ツアーが存在していることは事実だ。供給があるから消費があるのではなくて、需要があるから供給があるのだ。夜発1泊3日、ホテルと食事、リフト券、レンタルスキーまでセットになって1万5千円という激安ツアーを求める人々がたくさんいるのだ。そして、これはあまりにも結果論すぎるし、確率の問題でしかないのだが、もう1万円高いツアーを選んでいたら事故には遭わなかったはずだ。ある遺族の方も、今後このような事故が起きないために、自分自身の身は自分で守ること、優先順位を間違えないことをメディアに語ったそうだ《参照されたい》。極めて正常な感覚だと思う。

僕は自称ガジェット系ライターとして、常に賢い消費者としてあるべきだと思っている。それは、何かを買うとき、その品質と価格を十分吟味し、その背景をも想像して、本質的なコストパフォーマンスを考えることのできる消費者だ。安い交通手段を選ぶ人にとってのそれは「移動距離あたりの価格」なのかもしれないが、僕は違う。一番重視するのは快適性だ。座席は広いか、運転は上質かなどは検索すればすぐにわかる。東京に出かけるときも、従来の高速路線バスはよく使うけど、それの半額以下でやっている高速乗合バス(いわゆるツアーバス)は使ったことがない。トイレもなく、座席も狭いと、利用する人からよく聞く。片道500円だったとしても使わない。

格安ツアーや高速バス、交通手段に限った話をしているのではない。この問題は、僕たちの消費活動全てに関わることだ。廃棄されたはずの冷凍ビーフカツがどこかのスーパーマーケットで実際に売られていたらしいが、それもまた、例えば5枚200円の冷凍ビーフカツにそれなりの需要があるからだ。別に買う人を悪いとは言わないけど、僕は絶対に買わない。

一見すると高いと思う価格も、その品質に気づければ高くないと気づくことも多い。僕は、賢い消費者であるために、そういう買い物を心掛けている。今使っている最新のVAIO Pro 13 Mk2は20万円したけど、同スペックで15万円の海外メーカーのパソコンよりよっぽど「安い」と思っている。スペック表だけではわからない部分を僕は評価しているからだ。それは、キーボードの配列であったり、ボディの剛性であったりする。それって買うまでわからない部分だけど、僕はこれまで2台のVAIOを使ってきたから知っていたし、VAIOのサイトでもCPUのスペックよりもそういった点をしっかりと書いていた。

そういう点では車も同じだ。最近は車についていろいろ勉強したり試乗したりしたけど、これもまたデータからはわからないが、ボディの剛性とか視界の見やすさってのは、排気量や燃費なんかよりもとても大切だって実感した。トヨタ車はカタログの1ページ目で低燃費を主張しているわけだが、燃費の向上のためにボディがどんどん軽量化されていることは、意外とみんな購入するまで気づかないのではないだろうか。僕の家にも新型カローラフィールダー(ハイブリッド)があるけど、ハッチバックのドアがプラスチック製だなんて、イエローハットで店員さんにツッコまれるまで気づかなかった。およそ10年前のフィールダーと比べて燃費は格段に向上したが、運転のしやすさは大きく損なわれてしまった。僕が買ったわけじゃないけど、僕なら選ばない。

こういうことを書くと必ず「貧乏な人もいるんだよ」というツッコミが聞こえてくる。僕も全く金持ちじゃないから言えるけど、お金がないからこそ、消費活動には慎重にならなければけない。価格だけしか見れない愚かな消費者になってはいけない。品質のよいものにきちんと対価を払おうとする消費者が増えれば、市場も自ずと変わってくるはずだ。安物買いのなんちゃらという言葉は、古くから言われてきたことだ。

買い物しようよ!

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