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The OBON ― ハレの日に思うこと

毎年のことながら、僕の夏休みはたったの1日だ。今の仕事に就いて4年と少し、慣れたような気もするが、どこか寂しい気もする。しかし、サービス業に従事するものにとって、それはごく当たり前のことであり、そして避けようのないことだ。しかも、僕の勤務先は季節によって忙しさがだいぶ違うこともあり、8月の休みは合わせて3日しかない。そういうわけであまりにも貴重な休みなので、おうちでゴロゴロして過ごすことだけは絶対に避けなければならない。

これもまた毎年のことだが、お盆は必ず、ナオトが自宅を貸し切って開催してくれるBBQに参加する。高校時代の仲間が10人ほど集まって、肉やシーフードを焼き、ごく静かに飲む。決して大騒ぎなどしないのは、夜の住宅街だからではなく、ありのままでそのテンションでいられるメンツだからだ。鈴虫のコーラスと炭火の燃える音をBGMにして、必要最小限の音量とトーンで話す。喧騒に満ちあふれた低所得者向け居酒屋チェーンでの飲み会のように、離れた席の人に大声で話しかける必要もない。僕は、この落ち着いた宴がとても好きだ。飲み会っていうとワイワイすぎるテンションに疲れてしまうことも少なくないけど、この集まりはいつだって本当に心が休まる。なんとも心地よい時間を過ごすことができるのだ。

The OBON

この写真には、「The OBON」というタイトルを付けることにした。たった1日であっても、こうして素晴らしいお盆を過ごせることに対する感謝の思いが込められている。

日本はメリハリの文化だ。より崇高な言葉を使うなら、ハレとケの文化とも言える。私たち日本人は、いつだってクソがつくほどマジメに労働しているわけだが、盆や正月、あるいはGWなどのいわゆる「ハレの日」だけは意地でも働かず、ゴロゴロしたり、小さな焚き火をして先祖を呼び寄せたり、友人とビールを飲んだり、TSUTAYAで借りまくった映画をひたすら見たりして過ごすことを、昔から美としてきた。ハレの日というのは、繰り返される日常を一時的に忘れて、心から楽しむための、あるいは休息するための大切な時間なのだ。誰だって盆休みのあいだは、仕事用の携帯電話は機内モードにしているものだ。

ところが、私たちのレジャーは多様化し、盆や正月でさえも家でゴロゴロしているだけでは楽しめなくなってしまった。大型連休のたびに高速道路は大渋滞し、ショッピングモールは人であふれかえる。新しい祝日「山の日」の登場で少しだけ長くなった夏休みをエンジョイしている人々がいる一方で、そのあいだ一日も休みなしに働いている人もたくさんいる。時代は成熟しすぎてしまった。いったいいつから町の商店はコンビニを襲名して24時間営業になり、家電量販店は元旦から薄型テレビを売らなければいけなくなったのか。それはもちろん、時代の流れとともに避けようのないことだ。私たちはより多くの富を得るため、農耕や狩猟という生き方を捨て、資本主義経済という高度な文明を築きあげた。全ては通貨で取り引きされ、ノンストップで繰り返される。なんと素晴らしい時代だ。

10連休を楽しんでいる友人たちを横目に、意地でも季節感を失うものかと、僕は思わずカメラを手にした。

買い物しようよ!

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