「みんなともだち」を正義だと信じていたあの頃

小学校や中学校のころ、年間を通して黒板の上に掲示されている「学級目標」というスローガンがあっただろうか。その多くは担任が勝手に決めるトップダウンなものだったはずだ。

そういう言葉って大人になっても意外と覚えているものだ。僕の場合、小学校低学年のときは「みんなともだち」、高学年のときは「Enjoyみんなで」だった。なんと明瞭でシンプル、そして平和的な素晴らしいスローガンだと、当時は結構本気で思っていた。

なぜそんなことを急に思い出したかと言うと、この書籍を読んだからだ。

SB新書から出ている「麹町中学校の型破り校長 非常識な教え」という本である。著者はタイトルのとおり同校長の工藤勇一さんだ。ちなみに、公立の中学校である。

内容はとても斬新で、説得力のある話ばかりだった。それ故、教育関係者から見たら本当に「非常識」と思うこともあるだろう。しかし、常識なんてものは偏見のコレクションにすぎないと物理学者アインシュタインも言っていたし、それらは常に更新されるべきものだ。

詳しい内容については、Amazonに目次がしっかり掲載されているので、参照してほしい。あるいは、上のリンクから購入して読んでいただきたい。Kindle版ももちろんある。

協調性とは手段のひとつであり「目的」ではない

全体をとおして実に素晴らしい内容ばかりだったが、その中でも特に共感したのが、第3章「『協調性・みんな仲良く』を疑う」のセクションである。

義務教育を受けてきた人々の多くが「みんなと仲良くしなさい」と学校の先生に教えられ、そして、それをまったく疑わずに大人になってきた。だが、長い人生の中では、どうしても馬が合わない人に出会うこともしばしばある。そんなときは決まって、「誰とでも平等に仲良くしなければいけない」という学校教育による呪縛が僕たちを苦しめる。そして、「自分は人付き合いが苦手なんだ」という誤解によって挫折を味わったり、大きなストレスを抱えてしまう人さえもいるのだ。

他人と気が合わないということは、本来は、自分のせいでもなければ相手のせいでもないはずだ。違う人間なのだから仕方のないことである。しかし、その呪縛によって、他人との不一致を自分のせいにしたり、あるいは相手のせいにしてしまう。結果として、必要以上に相手を責めたり、あるいは自分に劣等感を抱くことになるのだろう。実に不毛な思考だと、僕は思う。

職場や学校においては、苦手な人とも必要最低限のコミュニケーションはとらなければならず、よい意味で人間関係は「上手く」やらなければならない。そのような本質的なことを、義務教育はなぜ教えてくれなかったのだろうと、大人になってみると強く思う。「苦手な人がいることはいけないことでもないし、恥じるべきことでもない」と伝えてあげるだけで、救われる子供がたくさんいるに違いない。

協調性とはあくまでも目標を達成するためのひとつの手段であって、「目的」ではありません。

麹町中学校の型破り校長 非常識な教え(Kindle版)位置No.1066

同僚の陰口を言うことほど愚かなことはない

自分と合わない人と仲良くする必要がないというのは、他人をあからさまに否定したり、陰口を言ったりしてもいいということでは、決してない。職場や学校を見渡してみれば、陰口を言っている人のなんと多いことか。しかも、外部の人ではなく、同僚やクラスメイトの陰口である。陰口こそ、人間社会における最大の愚行ではないだろうか。

先ほども言ったことだが、苦手な人がいることは仕方のないことだし、恥ずかしいことではない。好きな人もいれば嫌いな人もいてこそ、自然な人間関係だ。しかし、苦手な人に対して失礼な態度をとったり、その人が不在のところで陰口を言うことは、実に恥ずべきダサい行為だ。

さて、新型コロナによる自粛を余儀なくされている生活のなかで、いかに私たちが他人を許容できない生き物であるのかが浮き彫りになっている。例えば、営業している飲食店に陰湿な張り紙をするとか、県外ナンバーに嫌がらせをするとか、公園で子どもがキャッチボールをしているといって警察に通報するような人たちが多くいるらしい。このような人々のことを「自粛警察」と呼ぶらしいが、要するに自分が絶対的な正義であり、異質なものはすべて悪であると考えてしまう病気である。正義の反対は悪ではない、もう一つの正義だ、という有名なフレーズがあるが、まさにそのような寛容さが、つまり多様な価値観を許容できる心の広さが、こういう有事のときにこそ不可欠なのだ。

そして、そのような寛容さは短期間で身につくものではなく、小さい頃に受けた教育に依存するところが特に大きいと思う。だからこそ、この著者による学校教育は実に興味深いものだ。

まとまりのない記事になってしまって、本当にすまないと思っている。

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