伊坂幸太郎はこれが2冊目。だいぶ前に読んだ「グラスホッパー」がなんか好きじゃなかったので、それ以来どうも敬遠していた。今回、Quitazawa氏のお宅に遊びに行ったときに、本棚から貸してくれたので、なんとなく読んでみた。ちなみに、数年前に某氏に勧められた「アヒルと鴨のコインロッカー」は未だに私の本棚で積読状態を維持している。

率直な感想。なかなかおもしろかった。タイトルから思う限り、なんとなく現実離れしたものをイメージしていたが、実際はそうではなく、ごく日常が描かれた小説だった。まあ、不思議な力が出てくる時点で、日常ではなく異常なのであるが、あくまで日常として描かれている。伊坂幸太郎については賛否両論わかれるだろうが、私は、この作品はいいと思う。しかし、Amazonのレビューを見てみると、評価は決して高くなく、読者は厳しい意見を述べている。ただ、評価の数は多い。

この作品では、政権交代をひとつのトピックとして扱っている。それを軸にして、ファシズムの始まりが語られる。私たちの現実世界も、ちょうど民主党に変わったばかりなので、今読むにはホットな小説だと思う。ただ、壮大なテーマとしては、ファシズムというよりも、レジスタンスである。私たちは、日常という惰性の中でレジスタンスを忘れがちだ。友達との会話では無難に相づちを打ち、冬が寒ければチャリをあきらめバスに飛び乗る。そうして、レジスタンスは減衰していく。この小説は、私たちにレジスタンスを再認識させる。

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魔王(伊坂幸太郎)