Powered by ヨクナウィネ出版

日本の葬式は贅沢すぎた

またブックレビューかよ、IPPEIの日常を読みたいよ、という声が聞こえてこないわけでもないですが、まだ未レビューの書籍が机の上に積まれています。あしからず。

今日紹介する本は、宗教学者の島田裕巳さんの新書「葬式は、要らない」です。書店に立ち寄ったときに積んであったので、これは読むしかないだろうと思い、つい買ってしまいました。

今年のはじめ、小さい頃からよくしてくれた曾祖母が亡くなりました。葬儀業者がほとんど面倒を見てくれたとはいっても、それでも母は大忙しで、そして多くの出費を強いられている様子を見ていて、私はやはり疑問に思わざるを得ませんでした。死んだ人のために金と時間を使うのってどうなのよ、と。少なくとも自分は、絶対に葬式などやってほしくないし、墓もいらないです。葬式して墓買ってもらうくらいなら、最高級のウナギでも買ってくれたほうがよっぽど幸せです。

この本によると、日本の葬式費用は世界一高額です。欧米では10万~30万ほどなのに対して、日本は平均230万。特に、寺に払うお布施(戒名料を含む)が高すぎる。そして、戒名ってなんなんだという話です。しかもそれらは非課税です。筆者は、宗教学者という立場から、どのような歴史的背景を経て仏教が葬式仏教へと変化していき、そして日本人の葬式が世界一贅沢になったのかを分析します。とても分かりやすいし、宗教の勉強にもなります。

筆者は葬式そのものを否定しているのではありません。葬式仏教と、それによる典型的なコストのかかる葬式を否定しているのです。葬式は死を受け入れるためのケジメであるのかもしれないが、葬式をやったところで悲しみが減るわけでもない、と筆者は言います。ひとつの選択肢として、無宗教式の簡素な葬式もありだし、散骨もあり、というのが時代の流れです。

前の友だち地獄の記事とも共通して言えることがあります。現代の葬式が半ば世間体のために行われているということです。身分に合った葬式を行わないこと、つまり身分よりゴージャスな葬式を行ったり、貧弱な葬式を行ったりすることは、その地域コミュニティにおいて「空気を読んでいない」とみなされるのです。ましてや、葬式を行わないということは、つまり「世間体が悪い」ということです。これは、核家族中心の都会ではあまり意識されないことですが、村社会が残っているような田舎にはあり得る話です。村社会というのは昔のものだと思われがちですが、田舎では未だに健在で、実際に私の地元にも、地区の下に「耕地」というコミュニティがあり、さらにその下に「隣組」というコミュニティがあります。不可思議なことに、耕地内で誰かが死ぬと、すべての人が規定された金額の香典を支払うことになっています。おじいさん世代なら知り合いも多いかもしれませんが、私たちの世代にとってはほとんどが他人です。葬式だけじゃなく、結婚や出産に関しても同様です。たまに集まってBBQをしているような仲だから、といったような積極的な理由ならわかります。しかし、現状は違います。コミュニティはもはや冠婚葬祭のために組織されていると言っても過言ではないかもしれません。そして、それは「優しい関係」で成り立っているので、その慣習を「やめようよ」と言うことは誰にもできないのです。

ちょっと脱線してしまいました。とにかく、読んでほしい本です。仏教、とくに葬式仏教のありかたについて、一度考えてほしい。私は物心ついた頃から、占いや宗教などのいわゆるオカルトが大嫌いで、いわゆる無宗教信者(信者ではないか)として生きています。実家は仏教ですが、なんの宗派なのかも知りませんし、所属する寺にも行ったことすらありません。私の代になったら寺の契約は解除するつもりでいます。これはあくまで私の極めて個人的な考えですが、宗教などなくても生きていけます。最後に信じられるのは自分です。

Amazon for mobile
葬式は、要らない(島田裕己)

最後にひとつ。法学の授業で、ヨーロッパの方では遺言を書くことはブームで、中には毎年書き換える人もいると聞きました。というわけで、遺言とまではパブリックなものではないけど、ブログに一応書いておきましょう。そうすれば誰かしらが私の親族に伝えてくれるでしょうから。「葬式を行わず、簡単なお別れ会を行うこと。できれば屋外でBBQ。BGMは川村氏のピアノ。骨は海か山に散いてください。戒名を絶対につけないこと」…とりあえず、まだ80年は生きる予定でいますが、万が一の時はこれを思い出してくれると幸いです。

ブックレビューはまだまだ続きます。読書の夏、coming!!

それでは、また。

買い物しようよ!

コメントを書き込む

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

コメント

おや、コメントがまだありません。