主体性のない部活動なんて

数日前にNHKの「Rの法則」という番組が体罰について扱っていたので、とりあえず録画しておいて見てみた。まあ、机上ならぬテレビ上の議論という感じは否めなかったけど、北村弁護士がアツかったし、そこそこ面白かった。

ここ数週間の体罰についての議論をいろいろ見ていると、おおまかには、擁護派、場合による派、反対派の3つにわかれると思う。ちなみに僕は、完全に反対派である。体罰という以前に、暴行や傷害といった立派な犯罪行為だと思っている。愛があればやむを得ないという擁護派、場合による派もいるだろうが、それは愛ではない。そして、人間とは暴力を放棄したことによって知性を手に入れた動物だと思っているので、この時代においてそれを行使するやつを、僕は絶対に認めない。

という体罰に対する僕の考えなんてどうでもいいのでこのくらいにしておいて、今日は部活動について書きたいことがある。例によって今日もポイズンに満ちているかもしれないので、ポイズンな気分じゃない人は今すぐにTwitterにでも飛んだ方がいいと思う。笑

僕は高校の3年間、写真部を仕切っていた。というのは、1年生から部長をしていたからだ。桐島なんちゃらっていう映画じゃないけど、写真部というとスクール・カーストの底辺っていうイメージがあるかもしれないが、うちの部はそんなことなくて、男女あわせて30人くらいの割とイケイケな部だった。まあ、僕たちがイケイケにしたのだけど。

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それで、そんな自慢話はどうでもよくて、今になって思うのは、写真部のスタイルこそが部活動のあるべき姿だったのかなということだ。というのは、顧問が一切口出ししなくて、自主性を大切にした、というよりは自主性しかない部だったからだ。1年のときの顧問は少しは写真をやっていた人だったから車で撮影に連れて行ってくれたりしたけど、2~3年のときの顧問は写真はやらない人だったし、部活に出てくることすら稀だった。最初の頃は運営について相談したこともあったけど、「俺はわからんでまかせるわ」という感じだった。

そういうわけで、完全に放置だったから、すべて自分たちで決めて活動した。放課後や休日の活動も、大会への参加も、さらには部費の金額から使い道まで、顧問と相談して決めるということはまずなかった。すべて事後報告、あるいは報告しないというのが常だった。それでも、文化祭の準備のときは快く車を出してくれたり、全国大会のときには旅行を発注したり、レンタカーをぶっ飛ばしたりしてくれた。何か頼めば必ず協力してくれるけど、頼まなければなにもしない、本当にそういう人だった。他人から見たら写真部の顧問はやる気がないのかと思ったかもしれないが、彼はそうあるべきだと思ってそうしていたのだと、僕は信じていた。そして、部員たちを信じていたから、そうすることができたのだと思う。

じゃあ誰に指導してもらうんだと、運動部に所属していた人は言うかもしれない。だが、技術的なことはいくらでも自分たちで勉強して向上すればいいじゃないかと、僕は思う。Amazonを探せば書籍はいくらでもあるし、YouTubeにだって参考になる動画はたくさんある。指導してくれる人がいることはあたりまえ、というのは違うと思う。実は、とても恵まれたことだ。たまたま野球部の顧問が野球に詳しくて試合で監督をしてくれるという、あまりにも恵まれたことなのだ。(世の中は不思議なもので絶対にそうはならないのだけど)もし顧問が野球を全く知らなかったら部員の誰かが監督をするしかないだろうし、ブラスバンド部の顧問がト音記号の隣に書かれたCみたいな記号の意味を知らなかったら部員の誰かが指揮を振るしかないだろう。

今の話は少しばかりオーバーかもしれないが、そういう野球部やブラスバンド部があっても面白いと思う。写真部の顧問はカメラも持ってないほどの素人で写真のことは何にも教えてくれなかったけど、それで特に困ったことはなかった。部員たちはお互いに作品にダメだしをしたり、雑誌を読んだりして(コンテスト欄の講評はなにより勉強になる)、確実に腕を磨くことができていたからだ。僕にとって、部活動というものはそれが普通だった。

写真の撮り方さえ教えてくれない顧問は、古典のできない僕をいつも叱ってくれたが、成績は全く上がらなかった。なんだかんだ言って、僕の人生でもっともお世話になった先生だと思う。感謝しきれない。背が190センチくらいかそれ以上あったから、みんなから「ジャンボ」と呼ばれていた。元気にされているだろうか。

なんだか今日の話はうまくまとまらなかったけど、僕が言いたかったことは、主体性のかけらもない部活動なんて何が楽しいのだろうか、ということだ。体罰による自殺という事件があった背景には、スポーツを楽しむというよりも顧問に殴られないことばかりを考えて活動している部活動が、日本中にいくらでもあるのだと思う。体罰とまでいかなくても、多少の厳しい指導こそがチームを強くすると信じている顧問や部員たちが、残念なことに、きっと多い。みんな、ドエムだと思う。番組で北村弁護士も言ってたけど、顧問の言うとおりにやってできるのはあたりまえで、顧問がいなくても勝てるチームこそが本物だと、僕は思う。

この記事を読んで、写真部とは違うんだよ、という人が少なからずいると思う。それは仕方のないことだ。しかし、悪いけど、まったくそんなことはないと、僕は声を大にする。ただひとつ違うことと言えば、学校からもらえる予算が、同じくらいの部員を抱えるサッカー部よりも圧倒的に少なかったということくらいだ。

ここ数日の間に「桐島、部活やめるってよ」という映画を見て、原作の本を読んで、そしてNHKの番組を見て、いろいろ書きたいことが浮かんでは消えていく頭の中のぐちゃぐちゃを、Evernoteさえ介さずにブログに書いてしまった。いつも以上にまとまらない記事で、本当にすまないと思っている(バウアー風)。

あと、大切なことを言い忘れた。写真はスポーツだし、写真部は運動部だ。

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コメント

  1. IPPEI より:

    ホタルさん
    本当におっしゃるとおりだと思います。自主性を伸ばすと言っておきながら、まったくそれとは逆の教育をしていることも少なくないでしょう。その結果として生み出されているのは過激な勝利至上主義であり、趣味の本質を見つけられない子供たちも多くいると思います。自分自身で、あるいは仲間と多くの試行錯誤をしながらクオリティを上げること、そして何より、楽しむことそのものが娯楽の本質であるということを、多くの子供たちに気づいて欲しいものです。
    コメントありがとうございました。古い記事ですが、ホタルさんのように共感してコメントをくださる方がいて嬉しい限りです。またよろしくお願いします。

  2. ホタル より:

    こんにちは。3年も前の記事にコメント書くのどうかな?と思いながら、IPPEIさんに激しく共感してしまったので、独り言のつもりで書きます。
    思春期に最重要な教育は「自主性を伸ばす」ことであるのに、昨今の部活動のあり方はそれをぶち壊していると思います。応援だ後援会だと親まで加担して。はっきり言って、気持ち悪い。私は高校で剣道部でしたが、IPPEIさんの写真部のように活動していました。それでも決して手を抜くことはないし、自主・自由で素晴らしい部でした。顧問は年に1~2回ふらっと顔を出し、その時は「なんで来たんだ?何か問題でもおきたのか?」といぶかるぐらい。
    顧問や親が手をかけっぱなしという昨今の風潮の原因は、はっきり、大人が幼稚になったことだと思います。それに引きずられて生徒たちもどんどん幼稚になって行く。負のスパイラル。日本の将来が危ぶまれます。

  3. IPPEI より:

    Davyさん
    確かにそうなんですよね。学校って、「自主性」とか「自律」とか掲げてる割には、こうしなさい、ああしなさいって感じなんですよね。
    部活とかって別にマストなわけじゃないし、勝ったやつより、楽しんだもん勝ちなんじゃないかなと、僕は思ってます。勝たなきゃ意味がないと考える人もいるだろうし、まあ、難しいところですけどね。
    コメントありがとう。そして、いつも読んでくれてありがとうございます。本当に嬉しいです。今度は藤浪君が反論したくなるようなネタを用意しますね。笑

  4. Davy Fujinami より:

    たまにはブログにコメントをしてみます。

    IPPEIさんが、こういう風にご自分の考えを経験を用いて言葉にしてくれるというのが、何よりも嬉しいです。何考えてるかわからないヤツは面白くはあっても信頼はできませんからね。

    さて、本題。もちろん、毎度の事ながら全面的に同意です。イエスマンじゃないです(笑)
    体罰に関しては、俺は実は「場合によって」タイプではありますが、反対派に近く「数年に一度、誰がどう見てもやむを得ない場合」に限定されるべきものだと思っています。

    与えられた事しかできないヤツって、魅力無いですよ。世の中で大事なことって、問題の「解決能力」よりも、「いかに正しい問題設定をするか」にあるんですから。写真部の顧問の先生は、本当に立派な教育者だと思います。

    相手を良くしようと思って何かを強制するって情けない。自分と結婚してほしい女の子に対して、体罰(暴力)を使って結婚を強要したら犯罪ですよ。自主自律を掲げておきながら、そんなこともわからない学校が多いんですよね。