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多様性なんて口先ばかりの世の中だけど

芥川賞を受賞したと話題になった村田沙耶香「コンビニ人間」、友人たちから読んだという話をちょくちょく聞いたので、気になって僕も読んでみることにした。ちなみに僕は、単行本はめったに買わず、文庫化されるのを待つ派である。だが、Kindle Paperwhiteを手に入れたおかげで、セールなどを上手く活用すれば文庫程度の金額で読めるようになったのだ。しかしながら、ワンクリックで購入が完了して、1ページ目がすぐに開くというのは、なんとも恐ろしい時代だ。

率直な感想から言うなら、結構面白かった。そんなに厚さもないし、内容も難しくないので、軽快に読み進めることができる。内容については、タイトルは一切裏切らず、コンビニで何年もアルバイトを続けている36歳の未婚女性のお話だ。

コンビニの描写も鮮明で面白いのだが、36歳で未婚でコンビニでアルバイトをしているという少々異質な人間に対する世間の目と、それに対して一切迎合しない主人公の生き様のようなものが描かれている。「普通」でないものを受け入れることを知らず、必死で除外しようとする周囲を、主人公は決して感情的にならず、いつだって冷静に観察している。この作品の通快感はそこにある。多様性を尊重しましょうなんて、ほとんど口先ばかりの現代社会に対するアンチテーゼと受け取ることもできる。「みんな違って、みんないい」なんて学校の先生は言っていたけど、学校ほど多様性を押しつぶされる場所はないかもしれない。

正直なことを言うと、ストーリーが少々過激で、こってり感が否めなかった。本書の主張というのは僕はとても理解できるし、昔から同じように思ってきた。このブログを読み返せば、たぶん、いくらでも似たようなことは言っているはずだ。だけど、この種の主張って、あんまり声をラージにして言うことじゃないと思う。もっと少ない言葉で、さりげなく、じんわりと伝わるくらいがいい。じゃあどうしろって言われてもわからないのだけど…。本書では、世間と主人公とのギャップを描くシーンがたびたび登場するのだが、僕にはそれがちょっとだけしつこく感じられた。白羽さんだっけ、あの人のキャラもありえないくらい強烈すぎて、リアリティが薄くなってしまった。まあ、このくらい強い方が分かりやすくて万人にウケるのかもしれないが。

ところで、主人公が言うところの、人間の喋り方は周囲の人間に影響されるというのは、本当にそのとおりだと思う。喋り方だけじゃなくて、フォント(筆跡)とか、仕草なんかも、気がついたら伝染しているものだ。僕は自分の口調や筆跡について誰から影響を受けているのか、ある程度の自覚がある。こうして書いているブログの文体も、今まで読んできた書籍や他人の記事などから影響を受けているわけで、逆に言えば、他の誰かに影響を与えていることにもなる。人間にはDNAを超越した、つながり的な何かがあるのかもしれない。なんとも不思議なものだ。

かなり昔に書いて少しだけヒットした「僕の旅嫌いの本当の理由」という記事を思い出した。幸せのスケールは人それぞれなのに、まったく旅行に行かない僕を周囲が許してくれないよ、という内容だった気がする。言っていることは、コンビニ人間とおよそ同じだ。

買い物しようよ!

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